量子ファイナンスと経済物理学の研究を、公開された論文から解説します。
移動平均やチャートのパターンを統計の言葉に直すと、「過去の価格で条件づけたとき、その後の収益率の分布は変わるか」という問いになる。この問いを検定した古典的な研究と、規則の選び方そのものが結果を左右するデータ・スヌーピングの問題を整理する。
「量子ファイナンス」「量子インスパイアド」という言葉は、性質のまったく違う三種類の研究を指して使われている。量子コンピュータで計算する研究、量子アルゴリズムから着想を得た古典的なアルゴリズム、量子力学の数学で市場を記述するモデル。それぞれが何を主張し、何で評価されるべきかを整理する。
量子ランダムウォークは、古典的なランダムウォークの「コイン投げ」を量子力学の操作に置き換えたもの。確率ではなく確率振幅が足し合わされ、干渉が起きる。その結果、分布は時間に比例して広がり、左右対称な初期状態では二つの山をもつ形になる。仕組みと、金融への応用研究の現状を整理する。
株価はランダムウォークに従う、という仮説は1900年にさかのぼる。この仮説は価格の「向き」についてはよく当たり、価格の「振れ幅」の分布については外れる。どこが当たり、どこが外れるのかを、古典的な研究から整理する。